正常な細胞では、細胞周期は多様なタンパク質ファミリーによって各チェックポイントで制御されています。サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ (CDKs)、CDK阻害物質(CKIs)、およびP53やRBを含む腫瘍抑制因子は細胞周期を制御する代表的タンパク質です[1]。これらのタンパク質は細胞周期の各チェックポイントに作用し、細胞周期の回転を促進したり静止したりしています。
P53は細胞周期のG1/SとG2/M期を制御し、P53の機能を欠損した腫瘍細胞ではG1/S期で停止することが知られています。P53はCKIであるWAF1/CIP1/P21の転写因子です[2]。P21タンパク質の発現量を高めることによって、CDKsは抑制され、細胞周期は停止し、細胞増殖は抑制されてしまいます。幾種類かの神経芽腫細胞株では、P53活性化剤のnutlin-3(MDM2拮抗薬)で処理することによってP21タンパク質発現が誘発されて細胞周期G1/S期で停止することが測定されていますが、細胞株によってことなります[3]。
腫瘍抑制因子RBは神経芽腫に関与するタンパク質であることが証明されています。RBタンパク質は、細胞周期のG1/S期の調節因子として細胞周期の回転を制御し、細胞増殖を制御することになります[4]。非リン酸化状態のRBタンパク質は、転写因子のE2Fに結合したまま状態に留まりますが、リン酸化されるとE2Fから離れ様々な前駆癌遺伝子やDNAの複製を行うDNAポリメラーゼを活性化します[5,6]。神経芽腫患者4人の骨髄を調べた結果、1人にRB変異がみられ、進行性腫瘍と相関加関係が見られる骨髄浸潤で死亡した唯一の患者と報告されています[7]。Difluoromethylornithine
(DFMO) を使った間接的RB標的治療が試されています。DFMOはMYCN発現増幅神経芽腫細胞のRBリン酸化を阻害し細胞の成長を抑制します[8]。この作用はP27が介在しているようです。しかし、神経芽腫治療薬としてRBを標的とした開発はされていません。
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